2024731

 文部科学大臣 盛山正仁 様

子どもと教科書全国ネット21CTJN21

代表委員 石川康宏・石山久男・小佐野正樹・糀谷陽子・小森陽一

・鈴木敏夫・高嶋伸欣・田港朝昭・鶴田敦子・浪本勝年

・村田智子・堀尾輝久・山田朗

 

令和書籍『国史教科書』検定「合格」による

「近隣諸国条項」と「河野談話」の有名無実化に抗議する

 

 2025年度から使用される中学校新教科書の検定において、文部科学省は令和書籍の『国史教科書』第6版、第7版を「合格」としました。

 戦前の教科書と同じ題名をつけた、この『国史教科書』」は、歴代天皇の皇位継承図を冒頭に掲載し、「国生み神話」の紹介から始まるなど天皇を中軸にした記述であること、真珠湾攻撃の記述に「日本の快進撃」と見出しをつけ、ゼロ戦および戦艦大和の写真と説明に1頁を使い、特攻隊員の死を「散華」と記述するなど、侵略戦争を肯定・賛美していることをはじめ、数多くの問題が指摘されています。

 それにとどまらず、『国史教科書』には教科書検定にかかわる重大な問題があります。それは、「蒸し返された韓国の請求権」というコラムで、「慰安婦」問題について「日本軍が朝鮮の女性を強制連行した事実はなく、また彼女らは報酬をもらって働いていました。また、日本軍が彼女らを…『従軍』させ、戦場を連れまわした事実はありません」と断定していることです。

これらの記述は、「慰安婦」問題への日本軍の関与を認め、反省と謝罪を表明した1993年の「河野官房長官談話(河野談話)」を全面的に否定するものです。岸田政権を含む歴代の政権は、この「河野談話」を「継承する」ことを閣議決定しています。文科省は、2014年に「閣議決定その他の方法により示された政府の統一的な見解又は最高裁判所の判例が存在する場合には、それらに基づいた記述がされていること」と、教科書検定基準を改定していたにもかかわらず、上記の記述をそのまま認めてしまったことは重大な問題です。

 同時にこれらの記述が、教科書検定基準の1つである「近隣諸国条項(近隣のアジア諸国との間の近現代史の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされていること)」にふれるものであることも明白です。『国史教科書』の検定「合格」は、その意味でも重大な問題です。

 私たちは、教科書検定は廃止されるべきと考えており、検定の強化を求めるものではありませんが、検定を行うのであれば公正に行われるべきです。また、教科書検定の結果は、対外的には日本政府の歴史認識のあり方を示すものとして受けとめられます。その点からも、教科書検定は、歴史的事実にもとづき、諸外国との友好関係を促進するものであることが求められます。

 以上の趣旨から、今回、『国史教科書』の検定により「近隣諸国条項」と「河野談話」が有名無実化されたことに強く抗議し、今後、「近隣諸国条項」と「河野談話」を堅持することを求めます。

 

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